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オフィス移転の前にはアスベストをチェックしましょう
「アスベスト」――、この言葉を聞いたことはありますか? 建築資材として使われてきたアスベストは、耐火や断熱、防音に優れている特性が重宝され、広く建物に用いられてきました。しかし便利な反面、アスベストの繊維は細く軽いため飛散しやすい特徴があり、吸い込むと、肺がんや悪性中皮腫、アスベスト肺などの原因となるそうです。
オフィスビルでも鉄骨造のビルによっては、天井や間仕切壁に「吹付けアスベスト・耐火被覆板・アスベスト含有吹付けロックウール」などが使用されているケースがあります。
オフィスを移転する際にはアスベスト使用の有無や、人体に影響がないように対策工事を行っているかをしっかりとチェックする必要がありそうです。
そもそもアスベストとはどういったもの?
アスベストは、日本語では石綿と呼ばれ古くから建築資材として使われてきた建材製品です。耐火や断熱、防音に優れている特性がある為、人が多く集まるような学校、公民館、体育館、講堂や3階建て以上の鉄骨構造の柱、梁、床面積の合計が200平方メートル以上の鉄骨建造物の柱、梁で使われてきました。
しかし冒頭でも触れたように、アスベストの繊維は丈夫で変化しにくい繊維のため、一度吸い込んでしまうと分解や消滅することがなく、体内の蓄積し最悪の場合は細胞を刺して損傷させてしまうこともあります。
相次いで禁止・中止されてきた
その為、1975年には吹付けアスベストが原則禁止となりました。その後、アスベストを混ぜた吹付けロックウールに切り替わっていましたが、それも1980年には施工中止となり、ほかのアスベスト含有吹付け材も1988年には施工中止となっています。
そして2006年には労働安全衛生法施行令改正により石綿の含有量が重量の0.1%を越えるものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。
アスベストとシックハウス症候群は別のもの
アスベストに関する誤解として、「シックハウス症候群の原因となるのがアスベスト」と勘違いしてしまうケースがあります。ですがシックハウス症候群の原因となるのは、ホルムアルデヒドなどの化学物質で、アスベストとは関係ありません。
またアスベストは、かなり高濃度なものを長期間大量に吸い続けなければ、肺がんや中皮腫になる可能性がほぼありません。高濃度ではあったとしても、ひと呼吸ふた呼吸で病気になるものではありません。十分に注意することはもちろん必要ですが、ことさらに怖がることもありません。
オフィス移転の前にはビルオーナーにしっかりと確認を
先程お伝えしたように、アスベストを含んだ建材製品は2006年にはほぼ完全になくなっています。そのため基本的にはそれ以降に建設されたビルであれば、アスベストを含んだ建材が使われている心配はありません。またそれ以前に建設されたビルであっても、全てアスベストが使われているといったことはありません。そのビルにアスベストが含まれているかどうかを、一般の人が調べることはできません。その為、どうしても心配な場合は2006年以降に建設されたビルに移転することをお勧めします。難しい場合は、ビルのオーナーにしっかりと確認を取ってから移転するようにしましょう。